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〒561-0881
豊中市中桜塚2-25-12-205

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「要介護度が低い=支援は不要」と考えてしまうのは、本当に正しいでしょうか。
現場では、要支援や軽度と判定された方でも、生活の中で多くの困難を抱えているケースが少なくありません。買い物や調理がうまくできない、外出する意欲が湧かない、家族の支えに頼り切りになっている
——こうした課題は介護認定の数字だけでは見えてこない部分です。
そこで注目されるのが『 ICF(国際生活機能分類) 』です。本記事ではICFの視点を取り入れ、利用者の“本当の困りごと”をどう見抜き、支援に活かすかを解説します。
ICFは、WHO(世界保健機関)が定めた国際的な分類で、障害や生活機能を「医学モデル」と「社会モデル」を統合し、生活機能を多角的にとらえる枠組みです。
評価の対象は大きく分けて以下の要素です。
・心身機能/構造:身体的な機能や構造の状態(例:関節痛、視力低下)
・活動:立つ、歩く、食べる、話すといった日常行為(例:階段昇降が困難、調理の手順がわからない)
・参加:社会的な役割や交流、地域活動への参加状況(例:地域の集まりに出られない、趣味仲間との交流が途絶)
・環境因子:家族構成、住まいの環境、地域資源の有無(例:自宅周辺が坂や階段ばかりで買い物に行けない、公共交通が少ない)
・個人因子:性格、意欲、生活習慣など(例:元来外向的だが喪失体験で気力低下)
要介護度の認定では主に「心身機能」と「一部の活動」に焦点が当たりますが、ICFは生活全体を俯瞰できるため、利用者の“本当の困りごと”を見つけやすくなります。
現場では「介護度は低いけれど支援が必要」と感じるケースが少なくありません。代表的な3つの事例をICFの視点で整理します。
80代女性、要支援1。身の回りは自立しているが、買い物の困難から食生活が偏り、体力が低下。
→ 「環境因子」と「活動」に課題。近隣にスーパーがなく、坂道を歩いて行くのが難しいため、食材購入が滞っている。支援がなければ低栄養やフレイルのリスクが高まります。
70代男性、要介護1。妻を亡くしてから外出を控え、会話も減少。自宅で孤立し、生活リズムも崩れている。
→ 「参加」が制限され、孤独や気分の低下が大きなリスク因子に。近所に知人はいるが、本人が声をかけづらい状況で、孤立感が深まっています。
60代男性、要支援2。本人はある程度自立しているが、金銭管理や服薬を妻が常にフォロー。
→ 「環境因子」として介護者負担を見逃せません。具体的には、妻が買い物・家事・服薬管理まで担い、休む時間が取れない状況。家族支援がなければ共倒れの危険もあります。
では、私たち現場職員はICFをどのように日々の支援に取り入れれば良いのでしょうか。
歩行や排泄などの身体面だけでなく、「最近外出していない」「会話が減った」といった活動や参加の変化も意識的に記録します。例えば、「自宅前の坂がきつくて外出が減った」「近所の商店が閉店して買い物ができない」といった環境因子の記録は特に重要です。
介護職員、看護師、リハビリ職、ケアマネジャーなど多職種がICFの枠組みを共通言語として使うことで、「この人の困りごとはどこか?」を具体的に話し合えるようになります。
・買い物が困難 → 配食サービスや買い物支援のボランティアを紹介
・孤立傾向 → サロン活動や地域の役割を持てる場所へ参加を促す
・家族の負担が大きい → ショートステイやレスパイトケアを提案
・住環境に課題 → 福祉用具や住宅改修の導入を検討
こうした工夫により、要介護度では測れない“生活のしにくさ”に寄り添った支援が可能になります。
「介護が必要になってから」ではなく、「困りごとが表れ始めた時点」で対応することが重要です。ICFの視点を持つことで、早期から生活の質を守る支援ができます。
要介護度はサービス調整の重要な指標ですが、それだけでは生活全体をとらえられません。ICFの視点を持つことで、身体・心・環境を含めた“本当の困りごと”を発見できます。
大切なのは「この人は何に困っているのか?」と問い続け、生活の中で支援できる方法を探す姿勢です。
あなたの現場では、要介護度の数字の裏にある困りごとを、どのように見抜いていますか?
