2025.11.22

地域医療における看護師の役割とは

介護施設・事業所が“医療とつながる”ためのキーパーソン

■ 地域包括ケア時代における看護師の再定義

高齢化が進み、住み慣れた地域で最期まで暮らすという考え方が浸透してきた今、医療と介護の連携はより密接さを求められています。こうした中で、従来は病院内での業務を中心としていた看護師の役割が、地域全体に広がりつつあります。

看護師は、医療職としての専門性を持ちつつも、生活支援や地域連携においても重要な役割を担うようになってきました。介護施設・事業所にとっても、看護職の存在が現場の安心感や医療的判断の支えとなるケースが増えています。

■ 介護現場における不安と看護師の必要性

介護施設の運営においては、以下のような場面で医療的な判断や対応に迷いが生じることがあります。

利用者の体調急変時に、緊急搬送の要否を判断できる職員がいない
看取りや慢性疾患の進行への対応に、現場の不安が残る
医師や家族への情報共有に時間がかかり、対応が後手に回る

こうした場面において、看護師がいることで判断や連携がスムーズになる、あるいは訪問看護との連携によって対応範囲が広がると感じている管理者も多いのではないでしょうか。

■ 豊中市における支援体制と背景

豊中市では、地域包括ケアシステムの構築を目的として、「在宅医療・介護連携支援センター」が設置されています（※1）。
このセンターは、医療と介護の現場をつなぐハブとして、関係職種間の相談・調整・研修などの支援を行っています。また、豊中市介護保険事業者連絡会としても、こうした地域資源を活かした連携強化が意識されています。

地域の訪問看護ステーションも増加傾向にあり、事業所の特性に応じた連携の可能性が広がっています。看護師が「施設の職員」ではなく「地域の支援者」として関わることで、介護現場の安心感や対応力が高まる場面も少なくありません。

※1 出典：在宅医療・介護連携支援センター（豊中市公式サイト）

■ 地域における看護師の3つの役割

介護と医療の中間領域にある看護師の役割は、単に医療処置を行うだけではありません。以下の3つの観点から整理することで、地域医療における看護師の重要性がより明確になります。

① 医療支援者としての役割

医療的ケア（服薬管理、褥瘡処置、バイタルチェックなど）に加え、急変時の判断・初動対応や、医師との連携を担う役割です。常勤医師がいない施設において、看護師の存在は「安心材料」となります。

② 生活支援者としての役割

慢性疾患のある高齢者の生活支援、予防的健康指導、リハビリ職との協働など、“生活の中の医療”を支える存在として機能します。利用者のQOL（生活の質）に目を向けた支援が可能です。

③ 情報連携者としての役割

ケアマネジャー・医師・薬剤師・家族など多職種間の連携において、医療的判断と介護的視点を橋渡しする存在です。情報共有の齟齬やミスを防ぎ、チームケアの質を高めることに貢献します。

■ 他地域における取り組み事例（参考）

全国では、介護事業所と看護師が連携し、以下のような取り組みが見られます。

訪問看護ステーションと通所介護の協定：利用者が通所中に体調変化を起こした際、看護師が駆けつけて医師に連絡・判断を仰ぐ体制。利用者の入院リスク低下に寄与。
非常勤看護師の導入：週2日勤務で健康観察・服薬支援・職員教育を担当。施設内での“医療リテラシー”が向上。
看取り対応の多職種連携：グループホームでの事前カンファレンスに看護師が参加し、看取り期に向けた体制づくりを支援。職員の不安軽減に繋がっている。

※上記は他地域の汎用的な実践例であり、豊中市内の事業所の事例として特定されたものではありません。