認知症ケアは、中核症状(記憶・見当識・判断・実行機能などの“できにくさ”)と、そこから派生して表に出るBPSDを分けて考えると、関わり方が整理されます。**BPSD(行動・心理症状)**は、認知症の“病気そのもの”で起きる中核症状(記憶・見当識・判断などの低下)に付随して現れる、行動面や気持ちの変化のことです。
本人の体調・環境・人との関わり方などの影響で強まったり弱まったりします。
目次
代表例
- 行動:徘徊、興奮、暴言・暴力、拒否、同じ訴えの反復、夜間の不眠・不穏 など
- 心理:不安、抑うつ、妄想(盗られた等)、幻視・幻聴、焦燥 など
中核は“脳機能の変化そのもの”、BPSDは“本人×環境×体調×関わり”の相互作用で強まる反応、とイメージすると現場で共有しやすいです。厚労省の資料でも両者は区別され、BPSDは要因への働きかけで軽減が期待できるとされています。(厚生労働省)
課題(よくある取り違え)
- 「また財布がない!」
“なくした”のではなく記憶障害がベースにあり、そこへ**不安や被害妄想(BPSD)**が重なることがあります。叱責や説得で収まらないのは、この二層構造が背景にあるからです。(厚生労働省)
- 「ここはどこ?家に帰る!」
見当識障害に、夕方の疲れ・刺激過多・予定の見えにくさが重なると**焦燥(BPSD)**が強まります。夕刻のケア計画を見直すだけで落ち着くことも少なくありません。(厚生労働省)
- 夜間の大声・不穏
痛み・便秘・尿意・薬剤影響・温度など身体要因の点検が第一歩。急な発症や日内変動が目立つ場合はせん妄を除外し、医療連携のスイッチを入れます。(厚生労働省)
専門編:中核とBPSDの“違い”と見極め(短時間でそろえる共通言語)
- 定義を一言で
中核症状=脳機能の低下による認知機能の障害そのもの。
BPSD=その時々の体調・環境・関わりの影響で強まる行動・心理の反応。定義を一言で共有すると、チームの視点がそろいます。(厚生労働省)
- 鑑別の合図
「急に・ゆらぐ」はせん妄を疑う合図。感染や脱水、疼痛、薬剤も併走しやすく、評価の入口を閉じないことが安全です。(厚生労働省)
- 記録の順番(型に当てる)
中核→誘因(いつ・どこで・誰と・体調)→BPSD→介入→反応。この順で書くと、原因探しが感覚論から脱します。
- 介入の重みづけ
最初は非薬物(環境・スケジュール・役割・痛みケア)。薬物は主治医と最小量・最短期間・副作用監視を共有します。(jpn-geriat-soc.or.jp)
取り組み(現場で使える小さな工夫と、そのねらい)
- 財布訴え
**定位置の見える化(透明ケース+写真ラベル)は「探し回る時間」を減らし、安心の拠り所を作ります。さらに“使えた実感ノート(レシート貼付)”**を用意すると、自己効力感が保たれて訴えが落ち着くことがあります。
- 帰宅願望
今日の予定ボードで“いま・つぎ”を見える化し、夕方ケアの前倒しで疲れをためない工夫を。**歩行同行+ミニ役割(郵便の仕分け等)**は「ここにいる理由」を取り戻す手当てです。
- 夜間不穏
疼痛スクリーニングとトイレ動線の照明で身体要因を先に手当て。声かけは短く・穏やかに・刺激少なく、就寝前のルーティンを毎晩同じ順序で再学習します。
- チーム共有
申し送りは**「中核→誘因→BPSD→介入→反応」**の型で簡潔に。誰が読んでも再現できる記録が、翌日の“同じ失敗”を防ぎます。
豊中市の取り組み(紹介のみ・短文)
まとめ
“できない”は責めず、“困っている”をほどく。
中核とBPSDを分けて見れば、対応は自然とシンプルになります。急な変化は医療とつなぎ、慢性的な困りには環境と関わりを整える。小さな調整の積み重ねが、本人の安心とチームの余裕につながります。(厚生労働省)