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〒561-0881
豊中市中桜塚2-25-12-205

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介護現場において、3月という時期は特有の緊張感に包まれます。別れと出会い、膨大な事務作業、そして新体制への期待と不安。こうした変化の激しい季節に、私たちは一つの厳しい現実に直面することがあります。それは、年度末に「事故やヒヤリハットが増える」という傾向です。
なぜ、この時期に事故が起きやすいのでしょうか。それは、職員の技術が低下したからではありません。原因の多くは、多忙さゆえに生じる「注意力の分散」と、変化に伴う「心理的な動揺」にあります。管理者に今求められているのは、マニュアルを徹底させる厳しさ以上に、職員の心の余裕を取り戻し、安全な空気を現場に醸成する「静かなリーダーシップ」です。
今回は、年度末という特別な時期におけるリスクの本質と、それを防ぐための向き合い方を提案します。
3月の現場は、常に何かに追われています。新年度に向けた書類作成、退去や入居に伴う調整、さらには人事異動の引き継ぎ。こうした「介護以外の業務」が頭の片隅を占領しているとき、介護の基本である「観察」や「予測」の精度は、無意識のうちに低下してしまいます。
事故の多くは、技術的に難しい場面ではなく、移乗や移動といった「いつもの動作」の中で、ふとした瞬間に起こります。職員が「次の業務」のことを考えながら介助にあたっているとき、利用者様の微かな重心の移動や、足元のわずかな段差を見落としてしまうのです。
管理者が今、現場に発信すべきは「急がなくていい」という明確なメッセージです。どれほど事務作業が溜まっていても、目の前の利用者様と向き合う瞬間だけは、その一点に集中してもらう。そのための「時間の保障」と「心の許可」を、管理者が言葉にして伝えることが、最大の事故予防となります。
3月は、利用者様の顔ぶれが変わる時期でもあります。長年担当してきた方が去り、新しい方が入ってくる。あるいは、信頼していたリーダーがいなくなる。こうした環境の変化は、職員にとって大きなストレスとなります。
心理的に不安定な状態にあるとき、人は普段ならしないような判断ミスを犯しやすくなります。「これくらいなら大丈夫だろう」という過信や、「どうすればいいか分からないが、忙しそうな先輩には聞けない」という萎縮。こうした心の揺らぎが、重大な事故の引き金になるのです。
管理者は、この時期こそ現場の「風通し」に細心の注意を払ってみてください。ミスを責めるのではなく、ミスが起きそうな「不安な空気」を拾い上げる。新体制への不安を抱える職員に対し、「あなたが迷うのは当たり前だ」と寄り添う。その安心感こそが、現場に冷静な判断力をもたらし、結果として利用者様の安全を守ることに繋がります。
安全管理を自所の中だけで完結させようとすると、どうしても視点が内向きになり、マンネリや死角が生まれます。ここで活かしたいのが、地域という多層的な視点です。
例えば、**「一般社団法人豊中市介護保険事業者連絡会」**などの場では、他事業所で起きたヒヤリハットの事例や、それに対する改善策が共有されることがあります。他所の事例を「人ごと」とせず、「もし自所で起きたらどうするか」を議論する材料として取り入れることは、現場の危機管理意識をアップデートする絶好の機会です。
自所だけで解決しようとせず、地域の知恵を借りる。あるいは、ケアマネジャーや往診医、ご家族といった「外部の目」からの指摘を、改善への貴重なギフトとして受け止める。地域という広い繋がりの中で安全を捉え直すことで、一事業所の限界を超えた、より強固な安全網を築くことができるようになります。
安全管理の究極の形は、チェックリストを埋めることではなく、現場に「お互い様」と「声かけ」の文化が根付いていることです。
忙しいときほど、職員同士が「手伝おうか?」「そこ、危ないよ」と自然に声をかけ合えるかどうか。管理者が率先して、小さなヒヤリハットを笑い飛ばすのではなく、真摯に、かつ前向きに検討する姿勢を見せることで、現場は「隠さない文化」へと変わっていきます。
事故は、誰のせいでもありません。それは組織の「疲れ」や「隙間」が形になったものです。管理者の仕事は、その隙間を埋めるために、誰よりも落ち着いて、誰よりも優しく現場を見守ること。その静かな佇まいが、荒波のような年度末において、現場を支える最も強固な防波堤となります。
3月を事故なく乗り越えることは、そのまま4月からの新体制を最高な形でスタートさせるためのパスポートになります。
今、現場に流れている空気はどのようなものでしょうか。もし、少しでもトゲトゲしていたり、殺伐としたものを感じるのであれば、まずは管理者が深く呼吸をし、目の前の職員に「お疲れ様」と声をかけることから始めてみてください。
安全とは、技術ではなく「心のゆとり」から生まれるものです。そのゆとりを地域と共に育み、守り抜く。その決意こそが、利用者様と職員の笑顔を守る、揺るぎない力となります。
次回予告: 第8回は、地域での存在感を高める発信。 「事業所の“顔”が見えていますか?地域に信頼される広報と情報公開」。 ホームページや連絡会での振る舞いを通じて、自所の魅力を正しく伝えるための「伝わる広報」を考えます。
